【介護】指定難病1。『球脊髄性筋萎縮症(SBMA/Kennedy病)』について説明いたします。【病気】

球脊髄性筋萎縮症とは?分かりやすく説明します。

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今回は、指定難病1。『球脊髄性筋萎縮症(SBMA/Kennedy病)』について説明したいと思います。

球脊髄性筋萎縮症の説明

球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、成人になってから発症する極めて稀な神経・筋の病気です。

主に運動を司る脳や脊髄の神経細胞(運動ニューロン)が徐々に障害され、筋肉が萎えて(やせて)いくことで、手足や顔、口や舌の筋肉の動きが次第に難しくなっていきます。

男性に発症することが多く、ゆっくり進行するため“長期の療養を要する希少な病気”と位置づけられています(指定難病の条件に該当)。

球脊髄性筋萎縮症を分かりやすく説明すると

この病気を簡単に言うと、「大人になってから筋肉を動かす神経が少しずつ弱っていって、手足や舌・飲み込む筋肉が動かしにくくなる病気」です。

例えば、初めは足が重く感じて階段を上るのが辛くなったり、顔の筋肉がピクピクしたりすることがあります。
原因は、男性の体にある「アンドロゲン受容体」というたんぱくを作る遺伝子が変わってしまい、それが神経を傷つけるからです。

女性もこの遺伝子を持つことがありますが、発症することは稀です。

進行はゆっくりで、数年〜数十年かけて少しずつ症状が出てきます。

治る薬はまだ完全にはありませんが、症状の進みを遅らせたり、生活を少しでも楽にするためのケアがあります。
簡単に言えば「動かしづらくなった筋肉をどう支えるか」を長く考える病気です。

球脊髄性筋萎縮症の症状

  • 手足の筋力が少しずつ低下し、特に上腕・下腿近くの筋肉が影響を受けやすい。
  • 顔・舌・のどの筋肉に障害が出て、舌が萎えたり、飲み込みが難しくなったりする(嚥下障害)。
  • 筋肉が萎えて(筋萎縮)細くなっていく。
  • 男性の場合、乳房が膨らむ(女性化乳房)・睾丸が小さくなるなど、ホルモンや性別関連の症状が出ることも。
  • 発症してから10年程度で車イスが必要になることもあり、さらに進むと誤嚥(ごえん)性肺炎など呼吸器合併症が死因になる場合もあります。 

現在分かっている原因と研究の動き

この病気の原因として明らかになっているのは、X染色体上にある「アンドロゲン受容体遺伝子(AR遺伝子)」のCAG繰り返し配列が異常に伸びていることです。

この変異によって、男性ホルモン(テストステロン)の影響を受けた神経細胞が徐々に傷つくと考えられています。
つまり、遺伝子の変異+ホルモンの関与という少し複雑な機構です。

球脊髄性筋萎縮症の治療法

完全に治る治療法はいまだ確立されていません。

ただし、日本では「リュープロレリン酢酸塩(テストステロンの産生を抑える薬)」が進行を抑える効能が承認されており、さらに装具(例えば下肢用ロボットスーツなど)が歩行を支える用途で用いられています。

また、誤嚥予防や栄養管理、運動療法・理学療法など、日常生活のサポートが非常に重要です。

球脊髄性筋萎縮症の患者数

日本国内では、正確な患者数の把握は難しいものの、推定で 2,000〜3,000人程度 と言われています。

また、2019年度末時点で医療受給者証を持つ患者数は約1,500人となっています。

家族・介護職が意識したい支援のポイント

  • 転倒・転落のリスクを軽減する環境整備
    筋力低下により、転倒のリスクが高まります。廊下・トイレ・浴室などに手すりを設置し、滑りやすい床はマットなどでカバーしましょう。
  • 疲れやすさを考慮した生活リズムの調整
    筋力低下や疲労感は日内変動があります。無理な活動スケジュールは避けましょう。補助具を早期導入することで、体力を温存できます。
  • 嚥下障害・栄養管理の支援
    症状が進行すると、舌や咽頭の筋力が低下し、飲み込みが困難になります。食事中のむせ・咳込みが見られた場合は、嚥下評価を依頼。とろみ食や食事姿勢の調整も必要です。
  • 日常生活動作(ADL)の尊重とサポートのバランス
    初期段階では「できること」が多いため、過介助にならないよう配慮を。生活の中で「できることは自分で続ける」ことで自己効力感を保ちましょう。
  • 精神的サポートと疾患理解の共有
    外見の変化や身体の不自由さにより、無力感や孤立感を感じる方もいます。ご本人の気持ちに寄り添いながら、病気の理解や情報共有を丁寧に行いましょう。
  • 医療・福祉サービスの積極的活用
    難病医療費助成制度をはじめ、訪問リハ・訪問看護・居宅支援・特定疾患の相談支援など、使える制度を活用しましょう。リハビリ職(PT・OT・ST)やケアマネジャーと連携し、長期視点で支援体制を整えていくことが大切です。

まとめ|球脊髄性筋萎縮症を理解して前向きに支えるために

  • 成人男性に発症しやすい希少な神経・筋の難病です。
  • 遺伝子(AR遺伝子)の異常+ホルモン関与が原因で、筋肉を動かす神経が徐々に機能を失っていきます。
  • 手足・顔・飲み込み筋・舌などが影響を受け、進行に伴い生活への支障が出やすいです。
  • 根本的な完治治療は未だ確立されていませんが、症状の進行を遅らせる薬・リハビリ・装具などのケアが行われています。
  • 日本では2,000〜3,000人程度の患者がいると見込まれており、希少疾患として早期発見と継続的なケアが重要です。

参考引用)公益財団法人、難病医学研究財団『難病情報センター』ホームページより。

それでは、今回はこの辺で失礼いたします。

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