【指定難病7】『大脳皮質基底核変性症』とは?症状・原因・介護でできる支援について分かりやすく説明します!【病気】

指定難病7『大脳皮質基底核変性症』とは?

1. 大脳皮質基底核変性症の説明

ある日、右手で箸がうまく使えない――そんな「ちょっとした違和感」が、将来の大きな変化の序章かもしれません。

大脳皮質基底核変性症(CBD)は、脳の「大脳皮質」と「大脳基底核」にある神経細胞が徐々に壊れ、運動の調整と手足の巧みな動き、さらには認知や感覚にも影響が生じる進行性の神経変性疾患です。

40歳代以降に発症することが多く、時間をかけて症状が進み、日常生活に支障をきたすことがあります。

異常なたんぱく質の蓄積が確認されており、典型例では「パーキンソン様運動症状」と「皮質症状(手足の動作障害、感覚障害など)」が混在するのが特徴です。

2. わかりやすい説明

想像してみてください。あなたの体を動かすための「命令のケーブル」が少しずつ切れていく――そんなイメージです。

普段は意識しない「手でコップを持つ」「ボタンを押す」「歩く」「字を書く」といった動作が、だんだん“ぎこちなく”なっていきます。
たとえば、利き手であってもうまくボタンをはめられなくなったり、服のボタンを止めようとして手がうまく動かなかったり。
さらに足も重く感じ、歩きにくくなることもあります。
そのうえで、「言葉が出にくい」「字が書きづらい」「左右のどちらかの手が“自分の手”とは感じにくい」といった、“脳の仕組み”そのものの障害が出ることもあります。

感覚(痛み・触る感覚)は残ることが多いため、「見た目は普通に見えるのに、体が思ったように動かない」――このギャップが、本人にも家族にも大きな戸惑いをもたらします。

根本を治す方法はまだありませんが、リハビリや環境の工夫、介護の支援を組み合わせることで「可能な生活」を支えることができます。

3. 主な症状

大脳皮質基底核変性症の典型的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 手足の動作障害(失行・失用):麻痺はなくても、手や足が思うように動かせない。箸が使えない、ボタンが留められないなど。最初は片側に症状が現れることが多い。
  • 筋のこわばり(筋強剛)や動作の遅さ・無動:歩き出しが遅くなる、歩幅が小さくなる、体が固く感じるなど。
  • ジストニアやミオクローヌス、不随意運動:手足の不随意な動き、筋肉の異常収縮など。
  • 認知・言語・感覚の障害:言葉が出にくい(失語)、文字や形が認識しづらい、左右どちらかの空間が認識しづらい(半側空間無視)、記憶・判断力の低下など。
  • 日常動作や歩行の障害、転倒の増加:歩行・バランスの障害から転倒しやすくなり、介助や補助具が必要になることがあります。

ただし、CBDは非常に症状のバリエーションが多く、左右差がないタイプや、認知症型・失語型・進行性核上性麻痺(PSP)型など「非典型例」も珍しくありません。

これが診断を難しくしています。

4. 原因と研究の動き

この病気の原因は、現在のところ「完全には解明されていません」。
しかしながら、病理学的な研究によって、以下のような脳の変化が認められています。

  • 大脳皮質(特に前頭葉・頭頂葉)および大脳基底核(黒質・淡蒼球など)の神経細胞が脱落し、萎縮する。
  • 神経細胞やグリア細胞内に、異常にリン酸化された「タウ蛋白(Tau protein)」が蓄積する。CBDは「タウオパチー(4リピートタウオパチー)」に分類されます。
  • 遺伝性はほとんどなく、多くは孤発性(家族歴がないもの)です。

現在は、タウ蛋白の蓄積を標的とした治療法の研究や、生前診断のためのバイオマーカー探索などが進められています。

ただし、臨床診断と病理診断が乖離しやすく、感度・特異度ともに十分な診断基準が確立されていないという課題があります。

5. 治療法

残念ながら、現時点では CBD を根本から治す「確立された治療法」は存在しません

しかしながら、以下のような対症療法やケア、支援によって、生活の質(QOL)をできる限り維持・改善することが目指されています。

  • リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語・嚥下リハビリなど)で、関節可動域や歩行、日常動作をできるだけ維持。
  • 補助具や福祉用具、住環境の整備:杖・歩行器、手すり、滑り止め床、住宅のバリアフリー化など。
  • 症状に応じた薬物療法:パーキンソン様運動症状やジストニア/不随意運動に対する薬が使われることがあります。ただし、効果は限定的/個別差が大きい。
  • 多職種によるチーム医療:神経内科医、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、介護職などで連携し、身体機能・認知機能・日常生活を総合的に支援。

6. 患者数

日本国内での大脳皮質基底核変性症(指定難病7)の登録データおよび報告では、典型例は非常にまれであるとされており、一般的に「10万人あたり数人程度」と報告される希少疾患です。

ただし、非典型例や未診断例も多く、実際の患者数は報告より多い可能性があるため、注意が必要です。

7. 家族・介護職が意識したい支援のポイント

このような複雑で進行性の病気では、ご家族や介護職の支援姿勢が非常に重要です。
特に、以下の点を意識されることをおすすめします。

  • 早期の住環境整備:手すり、滑り止め、床の段差解消など、安全な環境を整えて転倒リスクを低減
  • 補助具・移動支援の検討:杖・歩行器・車椅子など、身体の状態に応じた移動補助具を早めに導入
  • 継続的なリハビリと日常動作訓練:関節拘縮防止、歩行維持、手先の動作訓練、言語・嚥下の維持訓練を定期的に行う
  • コミュニケーションと心理サポート:認知・言語の変化、感覚と動作のズレからくる戸惑いに対し、安心と尊厳を保てる対応を心がける
  • 医療・福祉サービスの積極利用:指定難病制度、訪問リハビリ・看護、福祉用具貸与、介護保険サービス、地域の難病支援センターなどを早めに活用

8. まとめ|大脳皮質基底核変性症を理解して前向きに支えるために

  • CBD は、大脳皮質と基底核の両方の神経細胞が障害されることで、運動機能と手足の巧みさ、認知や言語、感覚にまで影響する多面的な神経変性疾患です。
  • 手足の動作障害、筋のこわばり、歩行障害、言語・認知の障害など、多様な症状が典型例ですが、症状の出方は人によって大きく異なります。
  • 現時点で根本治療はなく、リハビリ・補助具・支援・環境整備などによる対症ケアが中心です。
  • 介護や支援では、安全な住環境の整備、移動補助、継続的なリハビリ、尊厳あるコミュニケーション、医療・福祉サービスの活用が重要なポイントです。
  • まれな疾患であるため、早期診断と専門医・多職種との連携、そして家族や介護職の理解と協力が、ご本人の生活の質を支える鍵となります。

参考引用)公益財団法人、難病医学研究財団『難病情報センター』ホームページより。

それでは、今回はこの辺で失礼いたします。

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