指定難病11「重症筋無力症」とは?
1. 重症筋無力症の説明
まぶたが下がる、ものが二重に見える、すぐに疲れてしまう――そんな症状が、日常生活の中で徐々に現れるのが「重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)」という病気です。
筋肉を動かす神経と筋肉の連携がうまくいかなくなることで、体のあちこちに力が入りにくくなる自己免疫性の神経筋疾患です。
指定難病11として、厚生労働省にも認定されています。
2. 重症筋無力症のわかりやすい説明
重症筋無力症とは、「脳からの命令が筋肉にうまく届かなくなる病気」です。
本来、筋肉を動かすには「神経の信号」が筋肉に伝わる必要があります。
この信号は「神経伝達物質(アセチルコリン)」という物質を通じて送られますが、重症筋無力症では、それを受け取る側である「受容体(レセプター)」が自己免疫の影響で壊されてしまい、信号が伝わりにくくなってしまうのです。
たとえば、電気コードが途中で断線していると、スイッチを押しても電気がつかないのと似ています。
この「断線」のような状態が筋肉と神経の間に起こっているため、筋肉に力が入りにくくなるのです。
3. 重症筋無力症の症状
症状の出方には個人差がありますが、以下のような特徴がみられます。
- 眼瞼下垂(がんけんかすい):まぶたが下がってしまい、目が開けづらくなる。
- 複視(ふくし):物が二重に見える。
- 顔や首、手足に力が入りにくくなる。
- 夕方や疲れたときに悪化しやすく、休むと回復する傾向がある。
- 飲み込みづらさや言葉のもつれ、呼吸困難など、筋力の低下による全身症状もみられることがある。
進行すると、歩行困難や呼吸筋の麻痺による命に関わる状態になることもあります。
4. 現在分かっている原因と研究の動き
原因は自己免疫の異常です。
体の免疫が本来攻撃しないはずの「アセチルコリン受容体」などを敵とみなし、抗体(自己抗体)を作って攻撃してしまうことで、神経の信号が筋肉に届きにくくなります。
現在、以下の抗体が原因として知られています。
- アセチルコリン受容体抗体(AChR抗体)
- 筋特異的受容体型チロシンキナーゼ抗体(MuSK抗体) など
研究では、原因となる抗体の種類に応じた治療法の開発や、早期診断技術の向上が進められています。
5. 重症筋無力症の治療法
重症筋無力症は治療可能な疾患であり、多くの患者さんが治療によって日常生活を維持できるようになります。
【主な治療方法】
- 抗コリンエステラーゼ薬:神経伝達を助ける薬
- 副腎皮質ステロイド薬:免疫反応を抑える薬
- 免疫抑制薬:免疫異常のコントロール
- 血液浄化療法(血漿交換・免疫グロブリン療法):一時的に抗体を除去する
- 胸腺摘出術:特に胸腺腫を伴う場合に有効
完治は難しいものの、適切な治療とリハビリで症状を大幅にコントロールできます。
6. 重症筋無力症の患者数(国内)
難病情報センターによると、**日本国内の患者数は約16,000人(2021年時点)**と報告されています。
男女比では女性にやや多く、発症年齢は20代と60代に多い「二峰性(にほうせい)」が特徴です。
7. 家族・介護職が意識したい支援のポイント
重症筋無力症の介護では、「疲れさせないこと」「休憩をこまめにとること」が大切です。
- 体調や天候に応じて活動量を調整しましょう。
- 長時間の会話や食事の介助はゆっくりと丁寧に。
- 疲れが蓄積しやすいため、休憩時間をしっかり確保する工夫を。
- 呼吸筋に症状がある場合は、感染予防と空調管理も重要です。
本人が「元気そうに見える」時でも、見えにくい疲労感が隠れていることを意識することが支援のカギです。
8. まとめ
- まぶたの下垂や筋力低下などが特徴です
- 自己免疫が原因で神経信号が筋肉に伝わらなくなる病気です
- 適切な治療により、日常生活を保つことができます
- 疲れやすさへの配慮と、こまめな休憩が介護のポイントです
- 患者数は全国で約1万6千人。男女ともに発症します
参考引用)公益財団法人、難病医学研究財団『難病情報センター』ホームページより。
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