指定難病12。『先天性筋無力症候群』とは?症状・原因・介護でできる支援について分かりやすく説明します!【病気】

指定難病12『先天性筋無力症候群』とは?

1. 先天性筋無力症候群の説明

「生まれたときから筋肉が弱く、ちょっとした動きがきっかけで体に力が入りづらい」――そんな違和感を抱える人がいるかもしれません。

先天性筋無力症候群(CMS)は、神経と筋肉のあいだの情報伝達(神経筋接合部)が、生まれつきの遺伝子異常によりうまく機能しなくなることで起きる先天性の神経筋疾患です。

歩き出しの遅れ、筋力低下、呼吸や嚥下の困難などが現れることがあり、指定難病12として指定されています。
進行性ではないものの、生涯にわたるケアと支援が必要となることが多い病気です。 

2. わかりやすい説明

この病気をたとえるなら、「筋肉に力を伝えるための“リモコンのコード”が、生まれつき少し断線しやすい状態」のようなものです。

普段、脳から「歩いて」「手を動かして」と命令がきたとき、それは神経→神経筋接合部→筋肉へと伝わります。
しかし CMS では、その“伝達の回路”に異常があるため、命令が弱くしか伝わらず、筋肉がしっかり反応できないのです。

結果として、「すぐに疲れる」「いつもより力が入らない」「呼吸や飲み込みが弱い」といった症状が起きやすくなります。
さらにこの状態は生まれつきで、成長や年齢に関係なく、そのまま続くことが多いのです。

だからこそ、本人だけでなく家族や支援者が「無理しすぎず、体の声を聞く」ことが重要になります。

3. 主な症状

先天性筋無力症候群では、次のような症状がみられます。 

  • 全身または手足・顔の筋力低下・易疲労性:歩き出しにくい、走れない、長時間歩くと疲れてしまう。
  • 眼・顔の筋肉の弱さ:まぶたが下がる(眼瞼下垂)、目を動かす筋肉の弱さ、表情が乏しくなる。
  • 嚥下障害・呼吸筋の弱さ:飲み込みが難しい、むせやすい、呼吸が苦しくなりやすい。重症では新生児期から呼吸補助が必要な場合があります。 
  • 発達の遅れ(乳児期〜幼児期):寝返り・お座り・歩き出しなど、運動発達が遅れることがあります。 
  • 症状の程度は人によって非常に幅広く、ごく軽い症状のまま日常生活にほとんど影響がない場合から、重症で生活全般に支援が必要となる場合までさまざまです。 

4. 現在分かっている原因と研究の動き

CMS は、複数の遺伝子の異常が原因で起きる「先天性の神経筋伝達異常」です。 

  • 遺伝子の異常により、神経筋接合部の構造や機能に関わるタンパク質が正しくつくられず、神経から筋肉への信号伝達がうまくいかなくなります。 
  • 遺伝形式は主に常染色体劣性型(両親から異常を受け継ぐ)ですが、型や変異部位によって異なる場合があります。 
  • CMS は非常に珍しい疾患で、世界全体で報告されている遺伝子診断済の例は少数であり、診断や原因の特定には高度な遺伝子検査が必要です。  現在、どの遺伝子変異かによって治療薬の有効性が異なるため、「どの型か」を明らかにする研究・診断が極めて重要視されており、国際的にも研究が進行中です。 

5. 治療法

残念ながら、CMS を根本から治す「万能な治療法」は確立されていません。 

ただし、原因となる遺伝子型によっては、薬物療法が有効な場合があります。たとえば:

  • 抗コリンエステラーゼ薬、または 3,4‑ジアミノピリジン などで、神経から筋肉への信号を強める治療。 
  • 一部の型では β₂受容体作動薬(例:サルブタモール、エフェドリン)が有効な報告があります。 
  • 日常生活支援として、理学療法や作業療法、呼吸リハビリ、誤嚥予防、適切な休息や環境調整などを組み合わせることが重要です。 

病気の型が異なれば、効果のある治療も異なるため、遺伝子診断と医療専門家との連携が不可欠です。 

6. 患者数

日本における CMS の患者数は非常に少なく、公式には 「診断例は30名程度」 と報告されており、全人口での推定は 約190〜270人 とされています。 

このように、希少疾患であるため「診断されていない例」「軽症のまま経過している例」が多く、実際の患者数は報告値より多い可能性もあります。 

7. 家族・介護職が意識したい支援のポイント

先天性筋無力症候群の患者さんを支えるにあたり、ご家族や介護職の方が特に心掛けたい支援ポイントは以下の通りです:

  • 疲労・負荷を避ける配慮:筋力が弱く、疲れやすいため、長時間の歩行や無理な動作を避け、こまめな休息を設ける。
  • 呼吸・嚥下の管理:呼吸筋や嚥下筋が弱ければ、誤嚥や呼吸不全のリスクがあるため、食事や水分補給は慎重に、環境・姿勢に配慮。
  • 安全な生活環境:床の段差をなくす、手すりをつける、滑り止めを敷くなど、転倒や事故を防ぐ住環境づくり。
  • 定期的な医療・リハビリとの連携:筋力低下の進行を防ぐため、理学療法・作業療法を継続。必要に応じて福祉用具の利用を検討。
  • 家族と支援者の情報共有と心理的ケア:希少疾患のため情報が少なく、不安や孤立を感じやすい。医療・福祉サービス、相談支援を早めに活用。
  • 本人の意思と尊厳を尊重:できることを見守り、過剰な介助を避け、「本人のペース」「本人が大切にしたい生活」を尊重する。

8. まとめ

  • CMS は、神経–筋肉間の信号伝達異常による先天性の筋力低下疾患です。
  • 症状は筋力低下、易疲労性、眼・呼吸・嚥下の障害など多岐にわたり、個人差が大きいのが特徴です。
  • 根本治療は未確立ですが、遺伝子型に応じた薬物療法やリハビリ・生活支援で症状の改善・安定が期待できます。
  • 患者数は極めて少なく、希少疾患であるため、診断・支援には専門医や福祉サービスとの連携が重要です。
  • 支援では、疲労管理・安全な環境・呼吸・嚥下への配慮・継続的なリハビリ・本人の尊厳を守るケアが鍵となります。

参考引用)公益財団法人 難病医学研究財団『難病情報センター』ホームページより。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、今回はこの辺で失礼いたします。

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