【指定難病16】『クロウ・深瀬症候群』とは?症状・原因・介護でできる支援について分かりやすく説明します!【介護】

指定難病16『クロウ・深瀬症候群』とは?

1. クロウ・深瀬症候群の説明

「手足のしびれ、体のむくみ、皮膚の色や質の変化――」複数の異なる症状が一度に現れたとき、それは単なる別々の病気ではなく、ひとつの病気によるものかもしれません。

クロウ・深瀬症候群は、血液の中の「形質細胞(プラズマ細胞)」に異常が起こることで、多発性の末梢神経障害・臓器腫大(肝臓・脾臓・リンパ節など)・内分泌の異常・M蛋白(異常なたんぱく質)・皮膚や体表の変化など、体のあちこちに症状が広がる全身性疾患です。

欧米ではこの病気をPOEMS症候群と呼び、クロウ・深瀬症候群はその呼称のひとつです。
日本では「指定難病16」に認定されています。 

2. わかりやすい説明

私たちの体には、免疫や血を作る細胞があって、普段は体を守る大切な役割を果たしています。
そのうち「形質細胞」という細胞は、体を守るための“武器(抗体)”をつくるために働きます。

しかし、クロウ・深瀬症候群では、その形質細胞が何らかの理由で“暴走”し、異常に増え、普通では出さないような“特殊なたんぱく質(M蛋白や血管内皮増殖因子=VEGF)”を出してしまいます。

この異常なたんぱく質が、神経や血管、皮膚、内分泌系など体のあちこちに影響を与えるため、「神経がおかしい」「お腹が腫れてきた」「肌の色が変」「むくみがひどい」など、多様な症状が同時に起きるのです。

たとえるなら、体の中で“武器をつくる工場”が暴走して、その“毒”が全身にまき散らされているような状態――それがクロウ・深瀬症候群です。

早めに気づいて適切な治療を始めることが、回復や症状の安定につながります。 

3. 主な症状

クロウ・深瀬症候群で典型的にみられる症状は以下のとおりです。 

  • 末梢神経障害:手足のしびれ、脱力、筋力低下、感覚の異常。歩きにくさ、手先の動かしにくさなど。 
  • 浮腫やむくみ:手足や体全体のむくみ、特に下肢の浮腫が目立つことがあります。 
  • 臓器腫大:肝臓、脾臓、リンパ節などが腫れる(臓器腫大)。 
  • 内分泌異常:ホルモンバランスの乱れに伴う症状(性ホルモン異常、代謝の乱れなど)。 
  • M蛋白血症や血液異常:血液中に異常なたんぱく質(モノクローナル蛋白)が検出される。 
  • 皮膚・体表の変化:皮膚の色が変わる(色素沈着)、体毛が濃くなる(剛毛)、血管腫(皮膚にできもの)など。 
  • 胸水・腹水など体の水分貯留:むくみだけでなく、胸やお腹に水がたまりやすい。 

これらが、単独ではなく複数同時に、かつゆっくりまたは波を伴ってあらわれるのが特徴です。 

4. 現在わかっている原因と研究の動き

クロウ・深瀬症候群(POEMS症候群)は、形質細胞の異常増殖(モノクローナル増殖) を基盤とする疾患とされており、これに伴って 異常なたんぱく質(M蛋白や特にVEGF:血管内皮増殖因子) が過剰に産生されることが、病気の多彩な症状の原因と考えられています。 

特に VEGF は、血管の透過性を高めたり血管新生を促す作用があり、それが浮腫・血管腫・臓器腫大などにつながる可能性が高いと報告されています。 

ただし、「なぜ形質細胞が異常増殖を始めるのか」「なぜこのような多彩な症状が出るのか」など、根本の発症メカニズムは十分には解明されておらず、現在も研究が続けられています。 

5. 治療法

クロウ・深瀬症候群に対しては、以下のような治療法や管理が用いられています。 

  • 血液疾患としての治療:形質細胞の異常を抑えるために、化学療法や薬物療法。特に、過去は骨髄腫治療と同様の方法が使われ、近年は新規治療薬(例:サリドマイドなど)や幹細胞移植も検討されています。 
  • VEGF を標的とした治療:VEGFの過剰産生が症状に寄与するとされるため、VEGF を抑える・調整する治療の研究が行われています。 
  • 対症療法と生活支援:浮腫・むくみの管理、神経症状の緩和、リハビリ、理学療法、栄養管理、日常生活のサポートなど――多くの症状が複合するため、多職種による支援が重要です。 

かつては予後不良とされていたこの病気ですが、近年の治療の進歩により、生命予後は改善しつつあります。 

6. 患者数

国内における最新の報告では、指定難病「クロウ・深瀬症候群(POEMS症候群)」の患者数は 令和元年度で187人とのデータがあります。 

また、過去の全国調査では報告例を含め 約392人、有病率は 10万人あたり約0.3人 と報告されたこともあります。 

このように、極めてまれな疾患であることがわかります。

7. 家族・介護職が意識したい支援のポイント

クロウ・深瀬症候群は、症状が多岐かつ多臓器にわたるため、支援には以下のような配慮が重要です:

  • 全身症状への幅広いケア:神経症状(しびれ・脱力)、浮腫・むくみ、皮膚変化、臓器の腫れなど、多様な症状に注意。定期的な医療受診と検査が必要です。
  • 身体の負担を減らす生活環境の整備:むくみや浮腫、あるいは神経のトラブルによる転倒リスクに備え、バリアフリー、手すり、床の滑り止め、適切な靴・履物の使用などを検討。
  • 栄養・水分管理とむくみ対策:浮腫や臓器腫大、内分泌異常があるため、食事、塩分、水分バランス、体重管理に配慮する。
  • 多職種連携による総合ケア:血液内科、神経内科、リハビリ、看護、介護、栄養管理、福祉サービスなど、多方面の専門家と連携し、症状に応じた支援を継続。
  • 心理的サポートと情報共有:希少疾患であり、症状や経過が人によって大きく異なるため、不安や孤立を感じやすい。患者さん・ご家族・支援職間での定期的な情報共有、相談支援、支援団体の活用が重要。

8. まとめ

  • クロウ・深瀬症候群は、形質細胞の異常による全身性疾患で、多発神経障害や臓器腫大、皮膚変化、浮腫など多彩な症状が現れます。
  • 異常なたんぱく質(M蛋白・VEGFなど)が原因と考えられており、症状には個人差が大きいのが特徴です。
  • 治療法としては血液疾患としての療法(化学療法、幹細胞移植など)に加え、対症療法と総合的な生活支援が重要です。
  • 国内の患者数は非常に少数(数百人規模)ですが、決して無視できる存在ではなく、早期発見・診断と適切な支援がカギとなります。
  • 介護や支援では、医療・福祉・リハビリ・栄養・心理など、多職種による連携と患者・家族へのきめ細かい配慮が求められます。

参考引用)公益財団法人 難病医学研究財団『難病情報センター』ホームページより。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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